デパート・百貨店文化論。都市論

現代消費社会における「都市」を形成・維持するうえで、様々な要因が必要であると思う。ここでは、「観光」と「ファッション」(著者、直江自身が提言する「ファッション観光論」)の結び付きに着目し、以下において「ファッション」の比重の大きさについて取り上げてみたい。
周知の如く、19世紀半ば、フランスのParisで、世界ではじめてボン・マルシェと言うデパートが産声をあげた。
明治大学教授、鹿島茂著『デパートを発明したブシコー夫妻』、立教大学大学院、北山晴一教授『おしゃれの社会史』に詳しい。(日本の百貨店やデパートの歴史は、三越伊勢丹高島屋などたくさんの著者が出版されているので参照してほしい。)
ブシコー夫妻が発明したデパートのシステムは、150年以上も経て、現代の日本の消費社会でも今なお取り入れられている。
その一例が「バーゲンセール」である。
「バーゲンセール」によって女性の欲望を喚起させる装置をデパートに導入し消費へといざなうシステムを構築し展開しているのだ。
そもそも、デパートは、都市に住む人々にライフスタイルを享受してくれるものである。その最たるファッションが非常に大きな比重を占めているのだ。詳細は、上記の著書を参照して欲しい。
その一例として「観光都市」でもあり「ファッション都市」でもある二つの側面を持つ都市を取り上げてみたい。

(典拠・引用文献2008年7月27日、『信濃毎日新聞社』7面)
「バーゲン客つかむ」
「[百貨店・ファッションビル]松本市のファッションビル「松本パルコ」は、今月1日から13日まで夏物バーゲンの「グランバザール」を開催。前年に比べセールの効果を実感しずらいテナントの目立つ中、健闘したのが他店より比較的単価の高い商品を扱うブランド品店だ。
若い女性に人気のブランド品店「マーク・バイ・マーク・ジェイコブス」の売上高は、前年比の56・0%増。男女共同のブランド品店「マーガレット・ハウエル」、男性専用のブランド品「ポールスミス」でも30%近く伸びた。松本パルコの営業担当は「買い控えていた顧客が、値引きセールに合わせて奮発したのではないか」と分析する。
長野市のJR長野駅のファッションビル「MIDORI」でも、1日以降、客単価の高いテナントが前年比を10%前後売り上げを伸ばしている。婦人用品店全体では前年実績を下回っているが、MIDORIの営業担当者は「自分磨きには出費を惜しまない若い女性層の支持を得ている」と話す。
苦戦が続く百貨店でもバーゲンは消費者をつなぎ留める有効な手段で最近の売り上げ減を補っている。
井上(松本市)は、4−6月の売上高が前年実績の94−96%にとどまっていたが、夏物バーゲンに入った7月は盛り返した。6月28日に始まったセールの前は、買い揃えの傾向がみられたという。「セールで安いものを求める傾向は、百貨店を利用する比較的年齢層の高い消費者も同じ。全般的には厳しい状況だが、今月は何とか前年並みをキープしたい」(広報室)としている。」(上記冒頭、典拠掲載。)

このような「バーゲンセール」は、女性のこころを掴むアイデンティティ確立のツールである。既に、ジョアン・フィンケルシュタイン『AFTER A FASHION』(京都造形大学教授成実弘至訳『ファッションの文化社会学』)のなかで指摘している。

あくまでも私の主観的な意見だが、都市を形成するのは、若い中間層の女性の欲望の力が無くして活性化はない。
これまで「デパート」と「ファッション」という二つの世界が、現代消費社会において切り離しがたく結び付いていれことを、都市の形成を取り上げながら論じてきた。この二つを別々に分けて考えるだけでは、現代消費社会を充分に理解することはできない。都市とデパートの相関関係の例をひとつとってみても、「ファッション観光論」(著者直江が提唱する)という新たな研究領域が明確に設定されなければならない必要性が見て取れるのである。
(「軽井沢プリンスショッピングプラザ」のバーゲンセールについては、他で言及してあるので省略したい。)
「バーゲンセール」は、都市の形成の根幹になるとともに、地域活性化、とりわけ女性のライフスタイルの享受をもたらしてくれる社会デザインなのである。
「バーゲンセール」無くして、現代消費社会の都市形成はない。最大限に活用する重要性が見てとれるのである。
備考
上記で、充分に展開できなかった部分については、今後の課題として、別の機会で論じたい。次号へ
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『直江道愛、NAOEMODE』
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